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近大通信司書

図書館サービス概論16

図書館サービスにおいて著作権をどのように考慮すべきかについて説明してください。

 

(1)著作権制度の意義

 著作権とは、著作者が自己の著作物を排他的に支配する財産的な権利である。

著作権法は、著作者の利益を守るためのものであるが、一方、文化の発展に寄与するため、著作者と利用者の利益のバランスを調整することをもうひとつの目的としている。

 図書館が扱う資料・情報には著作権法の保護の対象となるものが多く含まれているが、図書館が非営利で運営され、無料でサービスを提供する公益性の高い機関であるため、図書館サービスを円滑に実施するにあたっては著作権の一部が制限されている。

 ただし、図書館が著作権を無視すれば、出版物が売れなくなり出版・販売業界を圧迫、長期的には図書館が収集する資料の多様性も損なわれかねないことに留意する必要がある。

 

(2)図書館サービスと著作権

 つぎに図書館における主要なサービスと著作権について説明する。

①閲覧・貸出サービス

 著作者の許諾は必要ない。映画等については著作権処理済のものを提供している。

②複写サービス

 次のような場合等に、著作者の権利を制限する規定を設けている。

ア)利用者の求めに応じて、調査研究のために一部分(半分まで)を提供する場合(雑誌は最新号以外全部可)

イ)図書館資料の保存のために必要な場合

ウ)他の図書館等の求めに応じて入手困難な資料の複製物を提供する場合

 利用者に対しては、複写の目的や可能範囲についての注意を喚起することが重要である。

③映画上映会やCDコンサート

 営利を目的としない場合、著作者の許諾は必要ないが、「ビデオ頒布後3年以上経た作品を上映対象にする」等、日本図書館協会は自主的な規範を設けている。

④障害者サービス

 通常の資料・情報を加工して提供するにあたっては、障害者の権利を保障するために著作権法第37条において様々な規定が制定されている。健常者との情報格差是正を目指して今後も法改正が注目される分野である。