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近大通信司書

図書館サービス概論レポート

 身近な公共図書館都道府県立より、市区町村立が望ましい)を観察し、このテキストに書いてあることと比較しつつ、その図書館の特徴を述べ、またあなたの具体的な実現可能な希望を列挙しなさい。

 

 身近な公共図書館として最寄りのXX市中央図書館(XX県)を選んだ。

 はじめに基本的なサービス及び対象別サービスについてテキストの項目に沿って、その特徴を述べる。数値は『日本の図書館:統計と名簿2012』の「市区町村立図書館人口段階別集計」より引用し、比較するものとして同「公共図書館集計」より算出した市区立図書館の全国平均値を〈 〉を付して示す。

1.基本的なサービス

①閲覧

奉仕人口(千人):176〈143〉

延床面積(㎡):3945〈1335〉

職員数(人):35〈12〉

蔵書冊数(千冊):629〈402〉うち開架図書:384〈229〉

人口一人あたりの蔵書冊数(冊):3.6〈2.8〉

年間受入資料冊数(冊):46026〈19322〉

図書資料費(前々年度決算額/千円):82824〈29318〉

人口一人当たりの資料費(円):471〈256〉

インターネット閲覧用のパソコン:5台

 排架はNDCに沿ってなされているが、動物(4類)と飼い方(6類)の統合、また女性向け実用書(5類)を入口付近にまとめて別置する等、利便性の向上を図っている。

 フロアワークは排架担当者が兼任して随時行っている。

 図書資料費等が平均値よりも大きくなっているのは約3年後の新図書館への移転に伴い、現行の10万冊増を目標としているためである。

②貸出

登録者数(千人):63.2〈56.4〉

貸出数(千冊):2759〈809〉

予約件数(千件):317.0〈110.2〉

人口一人当たりの貸出数(冊):15.7〈5.6〉

 一人につき図書10点及びAV資料5点で15日間の貸出期間である。大きな特徴は、全ての蔵書をICタグで管理しているため貸出返却時の処理が10冊以上でも瞬時に読み込み可能で高速化されている点である。更に処理が容易なためセルフ貸出機の利用も可能であり、受付の混雑緩和が図られている。ICタグの普及率は国内10%程度であり、非常に先進的なサービスを行っているといえる。

 また、市内10か所の公民館図書室に毎日配送車が巡回しており、資料の返却・予約資料の受け取りがどの館でも可能である。

③複写サービス

文献複写枚数(千枚):26〈不明〉

 館内の資料については利用者自身でコピー機に料金を投入して複写を行う方法である。コピー機付近にあるべき著作権に関する表示が不足している。

④読書案内

季節や時事等、特定のテーマによる展示コーナーが毎月6か所更新され館内に新鮮さを与えている。フロアワークでは利用者の気配やサインを察知して声かけをしている。

⑤視聴覚サービス

AV資料蔵書数(点):12236

 館内での視聴は行っていない。

⑥レファレンスサービス

 参考室に参考業務を担当する職員が常時配置されている。また、メールにて「新着図書お知らせサービス」が受けられる。

⑦文化・集会活動

 講演会・手作り紙芝居講座・ボランティア団体を中心とした子ども向けお話会等、年間804回、参加のべ人数29241人という実績である。

⑧課題解決支援サービス

 今のところ、就職支援コーナーがみられる程度であり発展途上のサービスである。

2.対象別サービス

①児童サービス

 保健センターとの連携による4か月児向けのブックスタート・毎週の保育所への出前読み聞かせ・前述のボランティア団体活動等が認められ、平成XX年度「子どもの読書活動優秀実践図書館」として文部科学大臣表彰を受けている。

 ②ヤングアダルトサービス

 分かりやすい「ティーンズコーナー」という名称でYA向けの資料が一般書コーナーと児童書コーナーの中間地点に目立つように配置されている。YAに特化した新刊案内等は用意されていない。

③高齢者サービス

 文学作品を中心とした大活字本が入口付近に別置されている。また老眼鏡を常備し自由に使えるようになっている。

④障害者サービス

点字資料(社協と連携/点):373

録音資料(社協と連携/点):556

 誘導用ブロック・スロープの設置がある。また、視覚障害者に図書館員が付き添い、AV資料の曲目等を丁寧に説明しているのをしばしば見かける。

⑤多文化サービス

 外国人向けに特化した資料や情報提供は行われていない。複数言語によるサイン等も不足している。

3.この図書館に求める実現可能な希望

 第一に、ウェブサイトの充実を挙げたい。内容がやや乏しく魅力に欠ける印象が否めないのが残念である。例えば「蔵書情報」では「ベストリーダー」「ベストオーダー」ともに分類が一般・児童・雑誌・視聴覚にしか分かれておらず、「ビジネス書の人気作品が知りたい」という要求等がかなわず不満が残る。図書館のウェブサイト更新を利用者が心待ちにするようなコンテンツを期待したい。

 第二に、地域図書館行政の推進を挙げたい。現在、相互貸借の依頼については受けているが煩雑な手続きを経る必要があり、長ければ2カ月近く時間を要することがある。少なくとも近隣5市の連携を一層強化し、ウェブ上の横断検索や効率的な配送経路等の整備をして資料の有効活用を図りたいものである。

 

〈参考文献一覧〉

・XX市「XX市新図書館基本計画」,2010.03.

・XX市「平成25年度第1回XX市図書館協議会資料(資料2)-議題②平成24年度の利用状況について」

日本図書館協会『市民の図書館(増補版)』日本図書館協会,1976,168p

日本図書館協会図書調査事業委員会『日本の図書館:統計と名簿2012』日本図書館協会,2013,510p

文部科学省ウェブサイト「日本の公共図書館」(PDFファイル)

 www.mext.go.jp/a_menu/shougai/tosho/houkoku//06082211/013.pdf(2014年07月28日参照)

 

※講評:XX市図書館のことがよく調べられています。ご希望が実現するよう、働きかけてみてください。さらに他館を訪れ、相違点を考えてみてください。