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近大通信司書

情報サービス論レポート

大学図書館における利用指導の内容を述べた後、文献探索法(文献調査法)の効果的な指導のあり方について考察し、論ぜよ。

 

 はじめに大学図書館における利用指導の内容について述べる。

 1998年に日本図書館協会利用教育委員会が発表した『図書館利用教育ガイドライン大学図書館版ー』にその標準的な内容が示されており、「図書館主体で行う図書館利用教育の体系化と組織化を図ったもの」(「大学図書館版」発表にあたって)としている。「目的・目標」及び「方法」を5つの領域に分けて明文化うぃたものを次に挙げる。

領域1:印象付け/領域2:サービス案内/領域3:情報探索法指導/4:情報整理法指導/領域5:情報表現法指導

これをもとに各大学図書館が「ニーズと力量に合わせて」(作成方針7.)様々な利用指導を展開している。

 具体的な内容はテキストによると次の7種類である。

オリエンテーション、②図書館ツアー、③OPAC検索・カード検索指導、④文献探索法⑤コンピュータリテラシー、⑥レポート・論文を作成するためのステップ指導、⑦視聴覚機器やコンピュータ機器を使っての編集指導

 ここで更に具体的な滋賀医科大学付属図書館における利用指導の事例(注1)を挙げる。各内容に前述したガイドラインに示された領域との関連が明示されており、深い理解が得られる資料である。

①新入生オリエンテーション〈領域1・2〉

対象:学部新入生/内容:図書館の使い方、施設利用/形式:講義

②講義「情報指導」〈領域3〉

対象:学部新入生/内容:OPAC検索方法、ポータルサービス、電子ソースの紹介等/形式:実習(パソコン1人1台)/※半年を通じて行われる講義の1コマ(教員との連携)

卒業論文のための文献探索講習会〈領域4・5〉

対象:看護科3年生/内容:データベース検索実習、文献入手方法等/形式:実習(パソコン1人1台)※特別講義(教員との連携)

 次に文献探索法(文献調査法)の効果的な指導のあり方について考察し、論じる。

 文献探索法指導は、情報リテラシー教育において不可欠なものである。情報リテラシーとは「情報の必要性を認識し、必要な情報を入手・評価し、効果的に利用する能力」(注2)であり、文献探索法の指導もまた同心円的に、その能力習得を目指して行われるべきものである。

 効果的な指導の実践に求められる要素を大学図書館の場合について3つに分けて述べる。

 ひとつは学生のニーズの把握である。学生の課題解決におけるモチベーション強化を支援するものである。文献探索法の使用により「石器時代から現代社会への変革」に匹敵する有用性を体感する経験が必要である。具体的には全ての学生がごく初期の段階で機会を逸することなく受けることで、日本の知識注入型の教育による偏りを改善し、その基礎知識の確実な蓄積が図られる。更に学生の習熟度に合わせた指導であることが望ましい。1・2年生ならば一般的文献探索法、3・4年生には卒論提出に合わせてタイミングで開催する等である。独立した科目としての価値を示し、単位を認定することも有効であるといえる。

 次に指導内容の計画的・体系的実施である。集団指導による基礎的な指導の後、個別の相談を受ける体制が整っていること、例えばフロアワークの中で学生の具体的な状況に即して助言や提案をすることで製菓がその場で実感できる。1人1台のパソコンを確保する実習形式のガイダンスは講義形式よりもはるかに達成感が得られる。また、同じ内容を少しずつ高度にしながら繰り返し指導する「らせん型」の指導も効果的である。

 最後に指導者の連携・能力を挙げる。文献探索法の専門家である図書館員と大学の教員の協力体制が整ってこそ的確な指導が展開できる。授業の1コマを単発で図書館員が行うのみではなくカリキュラムの中に文献探索法を指導内容として組み入れることで文献探索法が学生の課題解決により一層密着したものとなる。必要なレファレンスツールを整備し、双方が的確に分担して指導を行う。そのためには教員側が指導に求める意図を充分に話し合い、そのメリットを教員にアピールすることが欠かせない。また、講義においては指導者のプレゼン技術が学生の理解度を左右する。そうしたスキルアップにも努めねばならない。

 以上、焦点を定めるために大学図書館に限定して述べた。しかし、文献探索法は情報化社会に生きる全ての人が獲得すべき能力であり、公共図書館学校図書館専門図書館にもその指導の役割を担うことが求められる。

 

〈引用文献〉

(注1)『平成24年度大学図書館近畿イニシアティブ基礎研修資料(研修5:滋賀医科大学 

   付属図書館 寺升夕希

(注2)『米国図書館協会(ALA)情報リテラシー委員会最終報告書』,1989

 

〈参考文献〉

 

※講評:良いレポートの1つです。(毛利先生)