児童サービス論04
児童図書館員の役割と役割を果たすための要件を述べてください。
(1)児童図書館員の役割
第一に、読む喜びや読書の楽しみを知ってもらうために子どもと本を結びつける活動をすることである。それには自身もサービスを担う大事な要素の一つであることを自覚しておく必要がある。
第二に、図書館の現場においてその実態を把握・評価し、それらをよりよい図書館サービスのための活動方針へ転化すること、正規職員であれば具体的には予算の要求等の措置を講じることである。
第三に、さりげない援助というかたちで利用者教育・マナー等を教えることである。インフォーマルな立場で子どもの成長に関わり、「心」を育てるものである。
(2)役割を果たすための要件
図書館員として役割を果たすためには、次の要件を満たさねばならない。
a)子どもを知る
奉仕圏域の個々の子どもについて自身の五官を駆使して知ること、子どもの発達の道筋や発達課題等を知ること、子どもの一般的読書傾向、また子ども界のいわゆる流行を知っておくことが求められる。
さらに子ども自身も気づいていない潜在的読書欲求を洞察する力も必要である。
また、子どものおかれている社会状況、見過ごされがちな子ども(障害児・入院児等)の存在を知っておくことも不可欠である。
b)子どもの本を知る
自館の資料とその整理体系、排架状況、利用実態、書庫の保存状態等を知るべきである。
また、基本図書やその評価についての知識をもつこと、児童書の選書や評価をする力量も必要である。そのためには出版流通事情、多様な形態の資料を知る必要がある。
特にこれらは、この職にある限り不断に取り組むべき課題である。
c)両者を結び付ける方法を知る(その技能を持つ)
直接サービスとして、具体的には読み聞かせ・ストーリーテリング・ブックトーク・読書案内・フロアワーク・カウンターワーク等、間接サービスとして、分類・排架・書架整理・展示掲示・ブックリスト・利用案内の作成・館外活動等の技能を持つことである。さらに時代の進展とともに新しい活動が追加されることもある。
児童サービス論06
子どもの本の分類と排架について述べてください。
(1)分類
分類とは、蔵書を体系化することで検索可能にし、本の所在の有無や位置を把握して効率よく活用するための作業である。
児童書の場合、まず①絵本、②主題図書、③児童文学、④その他特殊資料(紙芝居・AV資料等)に区分する。以下に各々の説明をする。
①絵本
赤ちゃん絵本、創作絵本、知識絵本、昔話絵本等に区分し、さらに量の多い創作絵本では画家の50音順に二次分類する。
②主題図書
主題図書では、同じ主題のものを集め、違うものを区分する。学問の分類にしたがって大きく十に区分し、数字を使って事物の概念とその上下関係を整理し体系化した日本十進分類表(NDC)を用いる。その項目は次の通りである。
「0類 総記(調べる本) /1類 哲学・宗教(考え方や心のこと)/2類 歴史・地理 /3類 社会科学(世の中の仕組みのこと)/4類 自然科学 /5類 技術・工学・生活科学/6類 産業/7類 芸術・体育・娯楽/8類 言語 /(9類 文学)」
(児童書ではこれを簡略化したNDC小学中学適応表もある。2桁100区分を基本とし、やさしい言葉を用いている点が特徴である。)
③児童文学(9類)
日本と外国で区分し、さらに作者の50音順に二次分類する。外国ではさらに国語区分をすると探しやすい。
以上が分類の基本であるが、児童書は一冊の中に多様な要素を含むものが多く、そのため機械的な分類では子どもの関心・興味と合致しない場合もある。これが児童書の大きな特徴であるといえる。そのため、実際には、次のような例外がある。
・同じ本を2か所に分類する
例えば「絵本」と「やさしい物語」、「物語」と「知識の本」、「シリーズ」と「単品」、「禁帯」と「貸出用」等、子どもと本との出会いの機会を増やす工夫である。
・関連の深い分類を統一する
植物(4類)とその育て方(6類)、生き物(4類)とその飼い方(6類)を統一する等、子どもにとって見つけやすくする工夫である。
(2)配(排)架
配(排)架とは、分類にしたがって、書架上に一定のルール(上から下へ、左から右へ)に従って順番に並べることである。具体的な配慮事項は次のとおりである。
・限られたスペースに効率よく置く。
・表示(サイン)や案内図は目指す本が探しやすいように分かりやすいものにする。
・どうしても区分したいもの、別扱いしないと管理できないものを別置する。(大型本・郷土の作家等)
・同一分類内では冊数が多ければ二次排列を用いる。(昆虫・球技等はさらなる細分化が求められる部分である)
また、児童書特有の配慮として次のような点を挙げる。子どもは視野が狭く、自分の周りのごく狭い範囲しか見ないため、いつも同じものが同じ場所にあるようにしておく。こうすることで安心感が得られる。また、子どもの目の高さになって、見やすさを工夫し、表紙が見やすいように平置きをする等も必要である。
さらに排架は館の機能・規模・スペース・蔵書の量と構成等、その図書館の独自性が重要な条件になる。
児童サービス論08
フロアワークとはどのような活動か、子どもにどのような働きかけをするのか述べてください。
はじめにフロアワークの活動内容について説明する。
フロアワークとは、カウンターワークに対して用いられる言葉である。カウンターワークは、貸出・返却・利用案内・レファレンス等、カウンターの中で利用者を待つ受け身の業務といえるが、それに対してフロアワークは、カウンターの外へ出てフロアを巡回し、利用者への働きかけができる能動的な業務である。
児童サービスにおけるフロアワークは、「子どもと本を結びつける」ための重要な活動である。子どもにとっては、カウンターの中よりフロアにいる図書館員の方が気軽に質問しやすく、図書館員にとっても、子どもからのサイン・気配を身近に感じ取れるため、子どもの興味や関心を現場で具体的に体感できるという大きなメリットがある。
次に子どもへの働きかけについて述べる。
具体的には次のようなものが挙げられる。
・図書館に不慣れで戸惑っている子どもに図書館の基本的な使い方(児童書コーナーの場所や本の借り方・返し方等)を案内する。
・学校の宿題や調べ学習では課題の内容についての話を聞いて一緒に書架をまわり、適切な資料を提供する。
・何か面白い本がないかと探している子どもに簡単なブックトークやごく短い読み聞かせをおこなって本を紹介する。
また、フロアワークでは次のことに留意する必要がある。
・困っている子どものサイン・気配を見逃さない。
・子どもの目の高さで話す。
・子どもの表現力不足を補って理解する。
・干渉やおしつけにならないようにする。
・子どもひとりひとりの個性に合った対応を心掛ける。(しかしながら、えこひいきになってはならない)
子どもと本を結びつけるためには、子どもと図書館員の間に信頼関係が不可欠である。子どもの本を知らない人を子どもは信用しない。効果的なフロアワークのためには、日頃から絶えず子どもや子どもの本に対する幅広い知識の蓄積に励まなければならない。
児童サービス論10
ストーリーテリングと読み聞かせを比較してください。
ストーリーテリングとは、子どもと向かい合って(対面して)おはなしや物語を語る行為であり、読み聞かせとは、声に出して本(絵本等)を読んであげる行為である。
両者の共通点は次のとおりである。
どちらも「人の声」を通して物語をたどる行為であり、特に言葉はわかっているが、まだ文字は充分読めない時期の子どもに非常に有効である。なぜなら耳からの言葉によってイメージが大きく広がり、想像力をふくらませて喜怒哀楽の感動を味わうことができるからである。このように子どもを読書に導く最良の方法であり、次の段階である一人で読む読書の基盤(素地)作りになる。
相違点は次のとおりである。
第一に、「言葉の種類の違い」である。ストーリーテリングは、おはなし・物語を「語る」行為である。基本的にはおしゃべりと同じ「話し言葉」である。よって文法よりも上手下手、語るうまさや語る妙が重要である。一方、読み聞かせは、文字に書かれたもの(活字等)を「読む」行為である。当然、それらは書き言葉であるので、「文法上の制約のある文章」である。
第二に、「内容の違い」がある。ストーリーテリングは、おはなし・物語以外は不向きであり、読み聞かせは、絵本・物語のみならず、科学・知識絵本や科学読み物、説明文等、選択の幅が非常に広い。
第三に「本の有無」である。ストーリーテリングは、本の存在がないため、声だけが唯一の伝達手段であり直接的である。そのため言葉が子どもに直接届き、語り手と聞き手の心の絆や交流が読み聞かせよりもいっそう強まる。それだけに聞き手に受け入れる準備ができていてこそ効果がある。
児童サービス論12
(※この問題が出題され、合格できました。)
子どものレファンスについて例をあげて詳しく述べてください。
子どものレファレンスとは、子どもが図書館に持ち込む「調べものの相談」についてアドバイスを与えることである。
はじめに子どもの調べものの内容について述べる。
ひとつには、身近な興味や関心のあることについての質問(自発的な疑問)がある。漠然としたものになりがちなため、勘と根気と洞察により質問内容を明確化する必要がある。ふたつめとして、学校の課題・宿題の解決(与えられた課題)がある。子ども自身が課題を理解していない場合も多い。答えそのものを直接教えることは避け、過去の事例の記録を活用して求められる答えのレベルを見極める必要がある。
次に、その具体的な手順を説明する。例として「カナブンについて知りたい」という質問(自発的な疑問)をとりあげる。
①レファレンスインタビュー
質問内容の明確化であるが、注意すべきは「記録をとる」、「子どもの目線で」、「詰問口調にならない」、「子どもが知りたいと思う以上にことを難しくしない」という点である。カナブンについてどんなことが知りたいのか丁寧に尋ねたところ、「羽化の時期、食べるもの」についての質問だということが判明した。
②検索手段の手ほどき
まずは『総合百科事典ポプラディア』、『朝日ジュニア学習年鑑』等の参考図書(通読せずに必要な部分を参照する本)を調べてみること、またOPAC(=Online Public Access Catalogue:オンライン蔵書目録)等のレファレンスツールも有用であることを教える。また複数冊の情報源を組み合わせるという調査方法が有効であることも教える。前述の質問については『雑木林の虫の飼い方』(48類、偕成社、1998)に詳しい記述があることが分かった。
③該当する資料にたどり着くための援助
実際に資料を手にするためには、主題による分類と排架のしくみを教える必要がある。また、できるだけ子ども自身で探せるように見守り、困っている場合は助言、それでも難しいようであれば一緒に書架まで案内する。該当資料に「幼虫から羽化までに約10か月かかること、食べ物は広葉樹の樹液であること」を発見した。
④レファレンス記録を残す
質問内容、回答、使用した資料、検索方法、特記事項等を事後に記録し、ファイル整備することで今後に活用できる。
最後に、子どものレファレンスの意義について述べる。
子どもは、自分で解決できたという体験から「わかるよろこび」を実感できる。「わかるよろこび」は「不思議に思う気持ち」をますます育み、観察眼が肥えて、課題解決力や自己学習力を自ら高めていくという大きな意義をもつ。
児童サービス論14
乳幼児サービスについて述べ、どのような働きかけがあるか述べてください。
(1)乳幼児サービスとは
「乳幼児」とは、乳児と幼児を合わせた言い方で、おおむね0~6歳児のことであるが、図書館での乳幼児サービスといった場合、0~3歳児を対象にしていることが多い。
子どもの発達段階において、3歳を過ぎると言葉の発達により話を聞く能力が身についてくるとされる。乳幼児サービスとは、それ以前のまだ物語を理解することのできない時期にある子どもとその保護者達に対するさまざまな働きかけである。
乳幼児サービスは、子どもと保護者のふれあいを促し、子どもの言葉と心を育て、子どもと保護者のきずなを深めるという子育て支援の意義をもつ。同時に図書館を身近に感じるきっかけとなる、公共図書館の重要なサービスの一つである。
(2)乳幼児サービスの働きかけの種類
乳幼児サービスの具体的な内容としては次のようなものがある。
イギリスで1992年に始まったものであり、日本では市区町村自治体が行う0歳児健診などの機会に、「絵本」と「赤ちゃんと一緒に絵本を楽しむ体験」をプレゼントする活動である。保健センター、図書館員とボランティア等が連携しておこなうものであり、一組の赤ちゃんと保護者毎に担当者が絵本の読み聞かせをして、絵本を介した心ふれあう時間を持つきっかけを提供する。
②乳幼児コーナーの設置
乳幼児のための良質な絵本を集めて別置し、カーペット敷きのくつろげるスペースを設けることが多い。赤ちゃん絵本は小型のものが多いため、別置をすることで他の本に紛れず、またどのような絵本を選んだらよいのかわからない保護者にも見つけやすい。
③おはなし会
10組程度の親子を対象に絵本やわらべうたを語りかけるものである。曜日・時間・担当者等、パターンを極力変えないことで子どもがだんだん慣れて楽しめるようになる。
④ブックリスト
この時期の子どもに勧めたい良質な本(はっきりした絵の、言葉のリズムや音の響きを親子で楽しめるようなもの)を選んで一覧にしたものである。ブックスタートのプレゼントのパックに同封されることも多い。
児童サービス論16
子どもと本をつなぐ方法にはどのような方法があるか、それぞれを簡単に説明してください。
子どもと本をつなぐ方法には様々なものがあり、大きく分類すれば次のように整理できる。
(1)直接働きかける大事な活動
ストーリーテリング・読み聞かせ・ブックトークがある。
これらは「人の声」を通して行われ、言葉を媒介にしておはなしや物語を語り、想像力によって物語世界をイメージするもので、子どもを読書に導く最良の方法であり、次の段階である一人で読む読書の基盤(素地)作りとなる。学校や保育所、入院児への働きかけ等応用範囲も広い。
(2)図書館内での活動や工夫
直接的な活動として、フロアワーク・レファレンス・読書相談等があり、間接的なものとして、展示・ブックリスト・排架・書架整理等がある。
フロアワークは、カウンターの外へ出てフロアを巡回することで子どもの気配・サインをじかに感じられ、子どもにとっても声をかけやすく、レファレンスや読書案内にもつなげられる重要な活動である。
一方、展示は「目で見るブックトーク」であり、話題になっているもの、季節や特定のテーマでおすすめの本をテーブルに並べて紹介する。場所を決めて定期的に内容を変えることで館内の新鮮さが演出でき、また子どもに新たな本との出会いを提供できる。
(3)連携
図書館間・学校・類縁機関等との連携である。子どもの読書ばなれへの具体的な対処等を共通の目的として活動する。
学校図書館との連携の具体的内容としては、学校図書館の資料不足を補うための団体貸出、配置されて間もない学校司書へのサポート、朝の読書活動を支えるボランティアを養成する講座の開催等がある。
また保健センターと連携したブックスタート等もある。
(4)子ども文庫活動
子ども文庫とは、民間の個人やグループが自宅や地域の施設で、子どもを対象として図書の閲覧や貸出し、お話会や読み聞かせを行う私設の図書館のことである。1970年頃に発展し子どもの読書環境を支え補う機能を果たしてきた。現在ではやや減少し、全国で約530か所程度の拠点が存在する。
(5)間接的な活動
読書コンクール・読書講座・お話講習会等がある。
児童サービス論18
公共図書館は「図書館法」に基づいて設置され、学校図書館は「学校図書館法」に基づいて設置されるものであり、両者は根拠となる法律が異なる。
学校図書館の目的は第2条において、「教育課程の展開に寄与する」とともに「健全な教養を育成する」と規定され、その具体的機能は次のように整理できる。
①読書センター
児童生徒が読書を楽しみ、読書の習慣を身につけるための援助をする。
②学習・情報センターとしての機能
児童生徒の自発的な学習活動を助け、情報を収集・選択・活用する能力を育てる。
③教員へのサポート
教科指導のための資料・教材を集めて教員に提供する。
また、司書教諭・学校司書を配置する点も公共図書館とは異なる。
つまり、学校図書館と公共図書館の最大の違いは、学校図書館の活動が常に「学習指導要領にそっておこなわれる」ということである。
例えば、読み聞かせやブックトーク等は「本を紹介する手段」として公共図書館でも学校図書館でも同様におこなわれるが、学校図書館の場合には、「国語の教科書に載っていた作家の他の作品を紹介する」、「社会や理科で学習したテーマに関してのブックトークをおこなう」等、授業で習ったことをさらに深めて広げていくという特別な目的をもって行われるものである。
児童サービス論20
ヤングアダルトの特徴から、ヤングアダルトサービスの必要性を説いてください。
はじめにヤングアダルトの特徴について述べる。
ヤングアダルト(=YA)とは、おおむね12歳から18歳の思春期にあたる青少年のことをいう。児童とも成人とも異なる「独特の時期」にあり、その特徴には次のようなものが挙げられる。
身体的発達として、第二次性徴があらわれ、性の芽生え・衝動を自覚する。また、精神的発達として、子ども扱いへの反発・自立に向けた親離れ現象・新しい自分を作り直そうとする第二の誕生を経験する。
外見的には流行を追って、派手な服装で目立とうとしたり、わざと退廃的なふるまいをする傾向もみられる。
性的成熟と異性関係・自立の喜びと不安・将来の生活設計、生きる意味の追求等の悩みやとまどいに揺れ動きながら、次第に自己概念と人格を形成し始める。
このように心身ともに非常に不安定ではあるが、一方で飛躍的に成長する可能性に満ちた大切な時期でもある。
次にYAにおける読書の必要性について述べる。
第一に、自己の確立のための読書が必要である。
まずは興味・関心のある分野について書かれたものを読むうちに自分の内面と向き合うようになり、だんだん自分を知り、自己を伸ばしていくことにつながっていく。そして自分の能力を自覚し、自分の目指す道、すなわち努力するべき方向が見えてくるのである。
第二に、YAの根本的な不安を解消するための読書が必要である。
そのためには本質的な力のあるもの、つまり彼らが潜在的に求めているものに真剣にかつ充分応えられる著作や文学作品が求められる。
そのうえで、ヤングアダルトサービスの必要性について述べる。
移ろいやすいYAが今、関心をもっているものに寄り添い、自分の好きな分野や興味・関心のあることがらを手がかりに彼らが自分ときちんと向き合うことができるようにすること、また、YA特有の様々な不安や悩みについて自分なりのこたえを本の中に見つけ出し、「本によって救われた」と本気で実感する体験ができるようにすること、それがヤングアダルトサービスの使命である。
彼らは間もなく社会に出て社会を支えていく側になる。次の世代を担うYAの育成を支援する、このような図書館サービスは、視野を広げてみれば、社会全体にとっての「公益」に確実につながるのである。
図書館情報資源概論レポート
公共図書館が地域資料を収集するのはなぜかを考え、地域資料の特性と今日の課題としての地域資料のデジタルアーカイブ化について論じなさい。
(1)地域資料を収集する根拠
1.地域資料とは
地域資料には、次のようなものがある。
①郷土資料:その地域をテーマとした資料全般をいい、古文書・古地図や昔話・伝説等の歴史的資料、またその地域を舞台にした小説やドキュメント資料等もこれに含む。
②地方行政資料:地方自治体やその他の外郭団体が刊行あるいは作成した資料であり、議会等の議事録や市区町村の広報・年次報告書や統計等がこれにあたる。
③地域住民が公刊した資料:地域の団体が刊行した報告書や調査研究、またその地域の出身者による著作等がこれにあたる。
2.地域資料収集の根拠
1.で示したような地域資料を公共図書館が収集する根拠は、次の3点に整理できる。
ひとつ目は、公共図書館の「原点」、すなわち存在意義に関わるものである。つまり、公共図書館そのものが設置母体であるコミュニティの使命に基づき、その「記憶装置」として機能・運営される「地域に根差した存在」であることに由来する。その地域の貴重な資料を、散逸を防ぐとともに網羅的に責任をもって収集し、それらについてのレファレンス質問に対応することも重要な業務となっている。
ふたつ目は、法令による規定である。図書館法第3条1号において、公立図書館は「土地の事情及び一般公衆の希望に沿い」図書館サービスを実施するために「郷土資料、地方行政資料、(中略)を収集し、一般公衆の利用に供すること」と収集すべき具体的内容等の筆頭に明記されている。また、「(新)公立図書館の設置及び運営上の望ましい基準」(注1)では「郷土資料及び地方行政資料、(中略)等多様な資料の整備に努めるものとする」と定められている。
三つ目は、新たな役割として期待される「課題解決支援」の文脈でとらえることができる。つまり、地域住民が抱える課題等の解決に役立つ資料や情報を的確に提供するために、歴史的資料のみならず現在の地域住民に直接結びついた市民生活に有用な資料の収集も不可欠なものとなる。
(2)地域資料の特性
(1)の1.で挙げた資料群の最大の特徴は、大多数が非市販資料である点にある。地方自治体の提供や地域住民からの寄贈等、定期的な出版情報にも乏しいため積極的な収集をおこなっていかなければ見落とされてしまうものも多数存在する。また、歴史・宗教・文学・芸術・産業・行政・都市計画等の幅広い分野にわたり展開されるものであり、形態についても印刷資料(図書・雑誌・新聞・地図等)・写真(フィルム)・マイクロ資料・CD-ROM等多岐にわたる。さらに新聞・雑誌の一部分等の断片的な情報である場合も多い。そのため、組織化が困難であり、レファレンスツールにおいても独自に作成する必要がある。
(3)地域資料のデジタルアーカイブ化の方向性
地域資料を円滑に利用するにあたっては、デジタルアーカイブ化が欠かせない。その理由として、①そのままでは提供できないような現物資料の破損・劣化防止、②インターネット上での公開による受発信の容易性と利用者の拡大(例:検索等)、③資料の活用の可能性の拡大(例:出版等の他のコンテンツへの利用等)が挙げられる。
私の居住する地域にあるXX市中央図書館(XX県)では「電子図書館ページ」として「広報・市勢一覧・総合計画・統計」・「行政資料(市役所の計画書や報告書)」「XX 市XX祭(XX祭のパンフレット等)」、「郷土資料ページ」として周辺地域の歴史・文化・行政・生活に関する資料を、「地域資料デジタルアーカイブページ」では、XX町全図等の古地図18点や「XX農報」等、その他様々な資料を、農業によって発展してきた歴史を軸に、地域住民の郷土意識(郷土愛)の醸成やコミュニケーションに貢献したいという明確な方向性をもって提供している。
デジタルアーカイブを整備するにあたっては、その目的・利用者層・活用場面(例:地域振興・生涯学習・観光誘致等)を想定し、情報提供の方法・規模等を充分に検討する必要がある。図書館で扱われるものは主に記録資料であり、古文書等の手書き資料は文書館で扱われ、非記録資料である発掘資料や標本等は博物館で扱われることが多いが、限られた予算の枠の中における、その望ましい役割分担についてもMLA連携等での慎重な協議が求められる。
なお、例示しきれなかったが、レポート作成のために調査したウェブサイト等の情報からも各地方自治体がデジタルアーカイブ化の方向性を模索している現状が多数把握できた。例えば、高額な費用・個人情報や著作権の処理・その活用のための人材の確保等、比較的新しい分野だけに取組むべき課題は少なくはない。
(注1)第2の一の2の(一)の②,2012年
〈参考文献〉
略
※講評:(1)(2)(3)と順序立てて記述できています。(3)のデジタルアーカイブでは、具体的な公共図書館の事例を示して記述できています。全体にポイントをおさええて記述できています。(森先生)
図書館制度・経営論レポート
図書館組織の種類をあげ、それぞれについて説明するとともに、利用者中心思考とは何かを考察したうえ、貴方が考える理想的な図書館組織を論ぜよ。
図書館運営を行う場合の組織には次の5つの種類があげられる。はじめに、それぞれの組織について説明する。
(1)機能別組織
図書館の職能、すなわち記録された知的文化財の収集・組織・保管・提供という図書館の機能別に部門化された組織である。具体的には、総務・収書・整理・奉仕等、資料の流れに沿って分割された組織をいい、日本の図書館組織として最も多く採用されている。長所は①管理コストが低い、②人材が少なくて済む、③管理統制がやりやすい等であり、短所は①専門家の育成ができにくい、②利用者サービスが浅くなる等である。
(2)主題別組織
資料の主題(例:自然科学・社会科学・人文科学・工学・医学・郷土資料・行政資料等)別に部門化を図るものである。各首題部門の下で職能別設計を設け、それぞれの部門が全ての業務を一元的に処理する組織をいう。最大の長所は特定の専門主題に関して深く関与しキャリアを蓄積することができるため、主題専門司書の育成ができることである。短所は、例えば主題別にカウンター・人員・レファレンスツールを複数用意しなければならない等、管理経費が多くかかることである。
(3)利用者別組織
利用者別に組織化を図るものである。館種により利用者は異なるが、大学図書館の場合は、学部学生・大学院生・研究者(教職員)等、公共図書館の場合は、児童・成人・障害者等に分割する。現実的には児童閲覧室の形でこの組織が部分的に採用されている場合が多い。
(4)資料別組織
資料の形態別に組織化を図るものである。具体的には、雑誌/新聞・逐次刊行物・貴重書/古典籍・特殊資料・地方資料・言語資料・地域研究資料・マイクロ資料・電子資料等に分割できる。長所は、扱う資料の形態が統一されていることにより、一連の業務の作業能率が向上することである。ただし、実際は閲覧制度のみに留まっている場合がほとんどである。
(5)混合組織
混合組織は、前述した4つの組織の長所を部分的に組み合わせた現実的な組織である。日本の図書館では、例えば機能別組織を基本としながらも、雑誌/新聞係や視聴覚資料係、マイクロ資料係にちては独立して資料の選定から提供までを一元的に処理する、また閲覧部門のみ利用者別・資料別に区別する等、多かれ少なかれ、この混合組織を採用している。
次に利用者中心思考について説明する。利用者中心思考とは、図書館政策を含めた図書館経営の礎となる哲学であり、「徹底して利用者側に立った図書館サービスを展開する」ことに尽きる。その精神は、まず「奉仕の心」に裏付けられTるものであり、図書館員には倫理的使命感の自覚が求められる。また、「顧客志向」も忘れてはならない重要な要素である。なぜなら、利用者の評価を得てこそ図書館の社会的地位が高められるからである。さらに、レファレンス業務における高度な専門性を備える等、高度情報化社会に対応した「情報センター的機能を備えた図書館」へと進化することで利用者の期待に応えることができるのである。
最後に私が考える理想的な図書館組織について論ずる。私は公共図書館で臨時職員として勤務する立場にあるが、職場は日々のルーティンワークを消化するのに最低限の人員が確保される厳しい状況にある。その中での理想を述べるならば、次のようなものとなる。
主題専門司書の育成が期待できる主題別組織を迷わずあげたいものだが、これを絵に描いた餅ではなく実現させるためには、やはり奉仕部門に限定しての展開になるのではないだろうか。
私の考えを補強するものとして次のような文章を引用する。岩猿敏生によれば(注1)、「開架図書を分類表の主題区分の排列どおりではなく、人文・社会・自然といった利用者の便宜を考えて行うとともに、それぞれの主題区分ごとに担当業務組織を設け、「主題専門司書を配し、閲覧・貸出・参考業務をさせる」とする。また、「技術サービスの分野は主題別に処理するよりも収集・分類・目録といった機能別に処理する方が能率的である」という。
まずは閲覧部門における主題別組織の展開を全国津々浦々に浸透させ、主題別組織が常識的なものとなることで、日本の図書館員のレベルの向上を図りたいものである。一方で、テクニカルサービスにおいては、機能別組織の長所である管理能力の向上・効率化を徹底し、無駄のない経営を図ることも不可欠であると考える。
〈引用文献〉
(注1)岩猿敏生「第2章 大学図書館の管理」『大学図書館の管理と運営』1992,日
本図書館協会,247p
〈参考文献〉
略
※講評:良いレポートのひとつです。(毛利先生)
児童サービス論レポート
(※一度再提出したのちに合格しました)
「読書の楽しみ」が子どもの成長に果たす役割を述べ、児童サービスの必要性を説いてください。そして子どもと本を結ぶために、あなたならどのような働きかけをしますか。具体的に述べてください。
(1)子どもの成長に果たす役割
「子どもの読書」とは、一般的な「書かれた物を自分の目で追っていく」という行為に加えて、誰かに読んでもらい内容を理解する「耳からの読書」をも含むものである。言葉を手掛かりにしてイメージを浮かべ、たくましい想像力で登場人物に同化して物語世界に入り込み、その世界を体験したかのように感情を高揚させる。この感情の起伏が重要であり、振幅が大きいほど心に強くそれが刻印され、記憶に深く留まる。
特に子どもの場合、それが激しい喜びを伴う記憶となる。その喜びを再度体験したいという欲求が生じ、継続して読むうちに言葉が蓄積され、徐々に読むことが容易になっていき、更に言葉を習得していくことに繋がる。
子どもの心が心底楽しみ、心が広がっている状態だからこそ、子どもの中にある良いものが芽生え大きく息づく、これこそが「読書の楽しみ」である。
本の中での体験が積み重なることで子どもの精神は鍛えられる。苦しみや我慢から思いやりや慈しみといった人間らしい感性を身に付け、一方で思考力や判断力といった知性を身に付けていく。感性と知性の両者がその子の好奇心や価値観を形成し人格が高まっていく。こうして人間的成熟がなされるのである。
(2)児童サービスの必要性
地方自治体が公費を投入して施設・資料・人・活動・予算を整備し「公共図書館システム」を運営するのは、読書が個人的営みであるだけでなく人間の暮しや社会の発展に有益である、すなわち公益である。
とりわけ子どもやヤング(児童サービスの対象者)が読書をすることは、その発達や成長に役立ち、更には将来のよりよい社会の構築に役立つと認められているからである。
「児童サービス」とは、子どもに「読書の喜び」を体感してもらう「子どものためのサービス」、子どもが読書をすることの意義を認めて、子どもと本を結びつけ、子どもが読書の楽しみを知って、それが子どもに定着するようにすすめ励ます、さまざまな活動、配慮、更にそのための環境づくりや条件整備を含めた総称である。
公共図書館には老若男女、他の学校の子、車椅子の人や目の不自由な人等様々な人々が訪れるため、本がみんなのものであることを知り、本を共有するという感覚が宿り、それはまた本がもたらす喜びを他の子と共有するということでもある。つまり、図書館での読書を通じて、子どもに他者の存在や社会というものに気づかせ、そ
れらと自分が繋がっているという感覚を育てる。このような社会的意義を児童サービスは担っている。
また、子どもは読む喜びを知ると自分で図書館に通うようになり、そこで自分の居場所を見つける。次第に自分の図書館だ、大事にしようという気持ちが強くなり、自然に規則を守れるようになり、友達にもそれを勧められるようになる。児童サービスはこうした「公共性の理解」にも繋がるのである。これが幼い頃から地域の図書館に子どもを連れていく意義といえる。
さらに、現在の子どもの問題として避けて通ることができない「子どもの読書離れ」という課題に対する研究や対処という役割を担うことも求められる。
(3)子どもと本を結ぶための働きかけ
最後に、子どもと本を結ぶための具体的な働きかけについて述べる。その方法は様々であるが、概ね次のよう
に整理できる。
①直接的な働きかけ
・ストーリーテリング、読み聞かせ、ブックトーク
これらは「人の声」を通して行われ、「言葉」を媒介にしてお話や物語を語り、想像力によって物語をイメー
ジするものである。(1)で述べた子どもの読書の楽しみを存分に味わえる最良の方法である。
・フロアワーク、レファレンス、読書相談等
これらは日時や場所の設定等の特別な準備を必要とせず、いつでもすぐに行える点が魅力である。受付カウンターを挟まず図書館員との距離が近いため、子どもは気軽に声をかけることができる。勇気を出して相談した問題が解決できた時には大きな満足感を得ることもでき、次回もまた相談してみようという気持ちが持て、図書館(員)への信頼も高まる。
②間接的な働きかけ
・排架、書架整理、展示、ブックリスト
特に展示コーナーは「目で見るブックトーク」であり、軽視できない働きかけである。子どもの場合は「いつも同じものがそこにある」という安心感が重要であるため、頻繁な書架の位置移動(別置等)は馴染まないが、特定の展示スペースについては「鮮度」を大切にしたい。視覚に訴えるポップ等に工夫を施し、子どもに今まで
知らなかった新しい本やジャンルを発見する機会を与えることができる。
さらに最寄りの公立図書館でこの夏休みに開催中の企画が非常に魅力的であるため紹介する。「夏休み読書感想文福袋」というものであり、小学校低・中・高学年を対象に、図書館お勧めの本(袋を開けるまで本の中身は分からない)と感想文作成のヒント、秘密のオマケ(記念品程度)をセットにして貸し出す。学校の宿題という多少ネガティブな材料をワクワクする明るく楽しいものに変換し、かつ子どもは確実に新しい本との出会いを体験することになる。
〈参考文献一覧〉
・赤星隆子ほか『児童図書館サービス論』理想社,1998,238p
・堀川照代『児童サービス論』(JLA図書館情報学テキストシリーズⅢ-6)日本図書館協会,2014,270p
※講評:設題①は書き直すことでかなりまとまってきましたが、まだやや説明不足のところもあります。つまりテキストで述べているところで欠けているところがあるということです。でも、だいたいの流れはこれでよいと思いますので、合格とします。今後も精進してがんばってくださいね。
図書館サービス概論レポート
身近な公共図書館(都道府県立より、市区町村立が望ましい)を観察し、このテキストに書いてあることと比較しつつ、その図書館の特徴を述べ、またあなたの具体的な実現可能な希望を列挙しなさい。
身近な公共図書館として最寄りのXX市中央図書館(XX県)を選んだ。
はじめに基本的なサービス及び対象別サービスについてテキストの項目に沿って、その特徴を述べる。数値は『日本の図書館:統計と名簿2012』の「市区町村立図書館人口段階別集計」より引用し、比較するものとして同「公共図書館集計」より算出した市区立図書館の全国平均値を〈 〉を付して示す。
1.基本的なサービス
①閲覧
奉仕人口(千人):176〈143〉
延床面積(㎡):3945〈1335〉
職員数(人):35〈12〉
蔵書冊数(千冊):629〈402〉うち開架図書:384〈229〉
人口一人あたりの蔵書冊数(冊):3.6〈2.8〉
年間受入資料冊数(冊):46026〈19322〉
図書資料費(前々年度決算額/千円):82824〈29318〉
人口一人当たりの資料費(円):471〈256〉
インターネット閲覧用のパソコン:5台
排架はNDCに沿ってなされているが、動物(4類)と飼い方(6類)の統合、また女性向け実用書(5類)を入口付近にまとめて別置する等、利便性の向上を図っている。
フロアワークは排架担当者が兼任して随時行っている。
図書資料費等が平均値よりも大きくなっているのは約3年後の新図書館への移転に伴い、現行の10万冊増を目標としているためである。
②貸出
登録者数(千人):63.2〈56.4〉
貸出数(千冊):2759〈809〉
予約件数(千件):317.0〈110.2〉
人口一人当たりの貸出数(冊):15.7〈5.6〉
一人につき図書10点及びAV資料5点で15日間の貸出期間である。大きな特徴は、全ての蔵書をICタグで管理しているため貸出返却時の処理が10冊以上でも瞬時に読み込み可能で高速化されている点である。更に処理が容易なためセルフ貸出機の利用も可能であり、受付の混雑緩和が図られている。ICタグの普及率は国内10%程度であり、非常に先進的なサービスを行っているといえる。
また、市内10か所の公民館図書室に毎日配送車が巡回しており、資料の返却・予約資料の受け取りがどの館でも可能である。
③複写サービス
文献複写枚数(千枚):26〈不明〉
館内の資料については利用者自身でコピー機に料金を投入して複写を行う方法である。コピー機付近にあるべき著作権に関する表示が不足している。
④読書案内
季節や時事等、特定のテーマによる展示コーナーが毎月6か所更新され館内に新鮮さを与えている。フロアワークでは利用者の気配やサインを察知して声かけをしている。
⑤視聴覚サービス
AV資料蔵書数(点):12236
館内での視聴は行っていない。
⑥レファレンスサービス
参考室に参考業務を担当する職員が常時配置されている。また、メールにて「新着図書お知らせサービス」が受けられる。
⑦文化・集会活動
講演会・手作り紙芝居講座・ボランティア団体を中心とした子ども向けお話会等、年間804回、参加のべ人数29241人という実績である。
⑧課題解決支援サービス
今のところ、就職支援コーナーがみられる程度であり発展途上のサービスである。
2.対象別サービス
①児童サービス
保健センターとの連携による4か月児向けのブックスタート・毎週の保育所への出前読み聞かせ・前述のボランティア団体活動等が認められ、平成XX年度「子どもの読書活動優秀実践図書館」として文部科学大臣表彰を受けている。
②ヤングアダルトサービス
分かりやすい「ティーンズコーナー」という名称でYA向けの資料が一般書コーナーと児童書コーナーの中間地点に目立つように配置されている。YAに特化した新刊案内等は用意されていない。
③高齢者サービス
文学作品を中心とした大活字本が入口付近に別置されている。また老眼鏡を常備し自由に使えるようになっている。
④障害者サービス
録音資料(社協と連携/点):556
誘導用ブロック・スロープの設置がある。また、視覚障害者に図書館員が付き添い、AV資料の曲目等を丁寧に説明しているのをしばしば見かける。
⑤多文化サービス
外国人向けに特化した資料や情報提供は行われていない。複数言語によるサイン等も不足している。
3.この図書館に求める実現可能な希望
第一に、ウェブサイトの充実を挙げたい。内容がやや乏しく魅力に欠ける印象が否めないのが残念である。例えば「蔵書情報」では「ベストリーダー」「ベストオーダー」ともに分類が一般・児童・雑誌・視聴覚にしか分かれておらず、「ビジネス書の人気作品が知りたい」という要求等がかなわず不満が残る。図書館のウェブサイト更新を利用者が心待ちにするようなコンテンツを期待したい。
第二に、地域図書館行政の推進を挙げたい。現在、相互貸借の依頼については受けているが煩雑な手続きを経る必要があり、長ければ2カ月近く時間を要することがある。少なくとも近隣5市の連携を一層強化し、ウェブ上の横断検索や効率的な配送経路等の整備をして資料の有効活用を図りたいものである。
〈参考文献一覧〉
・XX市「XX市新図書館基本計画」,2010.03.
・XX市「平成25年度第1回XX市図書館協議会資料(資料2)-議題②平成24年度の利用状況について」
・日本図書館協会『市民の図書館(増補版)』日本図書館協会,1976,168p
・日本図書館協会図書調査事業委員会『日本の図書館:統計と名簿2012』日本図書館協会,2013,510p
・文部科学省ウェブサイト「日本の公共図書館」(PDFファイル)
www.mext.go.jp/a_menu/shougai/tosho/houkoku//06082211/013.pdf(2014年07月28日参照)
※講評:XX市図書館のことがよく調べられています。ご希望が実現するよう、働きかけてみてください。さらに他館を訪れ、相違点を考えてみてください。
図書館情報技術論02
磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、フラッシュメモリについて、各々の記憶原理と種類について説明してください。
(1)磁気ディスク
①記憶原理
磁性体を塗布したディスクを高速回転し、磁気ヘッドを移動させる。隣り合う磁性体のN極とS極が同一であれば0、異なれば1、となる仕組みでビットを記録し、書き込み・読み出しをおこなう。
②種類
A)ハードディスク(HDD:Hard Disk Drive)
密閉された箱に収められた数枚のディスクで高密度に記録する。パソコンには必須の補助記憶装置である。
B)フロッピーディスク(FD)
容量が少ないため、現在ほとんど使用されない。
(2)光ディスク
①記憶原理
光ディスクの記録層にレーザー光によってピット(くぼみ)を刻み込み、「0と1」のデータを書き込む。読み出しはこのピットとランド(平面)にレーザー光を照射し、その反射した光の強弱により、データを再現する。
②種類
主なものは次の3種類である。
A)CD(Compact Disk)
音楽用のCDにコンピュータ用のデータを記録したもの。容量は650MBと700MBがある。
B) DVD(Digital Versatile Disk)
映像用DVDにコンピュータ用のデータを記録したもの。容量は4.7GB、8.5GB(二層)、17GB(両面二層)がある。
C) BD(Blue-ray Disk)
DVDの更なる大容量化を目指して開発されたもの。容量は25GB、50GB(二層)など。
さらにCD・DVD・BDには、それぞれに次の3タイプがある。
a)ROMタイプ:読み出し専用。本の出版に似ている。
b)Rタイプ:追記のみ可能。ノートにインクで文字を書くことに似ている。
c)RWタイプ:全消去ののち、書き込み可能。ノートに鉛筆で文字を書くことに似ている。
(3)光磁気ディスク
①記憶原理
磁性体にレーザー光を絞り込んで当てると、その部分が熱せられて磁化する性質を利用して情報を記録する。
②種類
A)MO(Magneto-Optical disk)
容量は640MBのものが一般的である。
B)MD-DATA
音楽用のMD(ミニディスク)をコンピュータ用記録媒体としたもの。容量は130MBである。
(4)フラッシュメモリ
①記憶原理
半導体メモリの一種(不揮発性メモリ)であり、外部から電気の供給がなくても記憶が残る。トランジスタに電荷保持領域を備えており、この場所の電荷の有無で「1と0」を記憶する。
②種類
A)USBメモリ
フラッシュメモリとUSBコネクタを一体化したものであり、パソコン間のデータ移動に適する。容量は8GB程度からさらに容量を増加させたものが開発されている。
B)コンパクトフラッシュやSDカード等
携帯電話・デジタルカメラ等の小型のデジタル機器記録用のメモリーカード等、各社が様々な種類を開発している。
図書館情報技術論04
(※この問題が出題され、合格できました。)
WWWについて説明してください。但し、ハイパーテキスト、リンク、HTML、WWWブラウザー、HTTP、これらの単語を使って説明してください。
WWW(World Wide Web)はインターネット上における文書(および画像・動画)の公開・閲覧システムである。
WWWのページはHTML(Hyper Text Mark-up Language)というコンピュータ言語を用いて文書を加工したものをWWWサーバ(情報送信を行うコンピュータ)に載せている。
WWWを閲覧するためは、インターネットに接続したのち、WWWブラウザーというアプリケーションを使用する。ウィンドウズパソコンに標準でインストールされているInternet Explorer やiPadのSafari等がこれにあたる。
WWWサーバはWWWブラウザーから文書を閲覧したいという要求が寄せられると、その文書をWebクライアントに向けて送信し、WWWブラウザーは送られてきたデータを解析し表示する。この際の送受信の手順を決めた約束事(プロトコル)がHTTP(Hyper Text Transfer Protocol)である。
WWWの特徴は、例えばWebページAからWebぺージB、そこからWebページCへと画面上のリンクをクリックするだけでWebページを次々に閲覧することができるハイパーテキスト構造にあるといえる。また、画像や音声等の表示が容易であるため、マルチメディアに対応した豊富な情報の発信・提供を可能にしている。