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近大通信司書

情報資源組織論レポート

カード目録の構成要素について、その概要を次の4項目に区分して述べてください。

1.記述(書誌記述) 2.標目 3.標目指示 4.所在記号

また、日本十進分類法(NDC)の特徴について説明してください。

 

 はじめにカード目録における4つの構成要素について述べる。

1.記述(書誌記述)

 記入の中心に位置する主要な要素である。定められた情報源より、転記の原則(タイトルと責任表示に関する事項、版に関する事項、出版・頒布に関する事項、シリーズに関する事項の4つは主観を交えず表示されているままに記録する)等の規則に従ってタイトルや版等8つの書誌的事項を正確に記述し、記述の対象となる資料の実態をできる限り忠実に表現する。記述の役割は利用者が目録を検索する際に、求める資料を同定識別する判断材料を提示することである。

2.標目

 記入の冒頭に位置する見出しである。目録内における配列位置を決定する第1要素となり、また利用者が目録を検索する際の重要な手がかりでもある。種類はタイトル標目、著者標目、主題(分類・件名)標目があり、1点の資料につき、アクセス・ポイントとすべき事項を一定の規則に従って全て抽出し、その数だけ記入を作成する。記入の排列を容易にするために、分類標目は分類記号すなわちアラビア数字で、それ以外はカタカナで表記する。

3.標目指示

 記述の下部に位置するカード目録に特有の要素であり、標目を作成する際に必要な標目を一覧できるようにした目録作業者のための事務的情報である。逆にどのような標目が作成されたかをたどることが可能で、対象資料が除籍になった場合の作業(標目指示に記載のある記入をすべて排除する)にも使用される。タイトル標目にはsの各略号が冠された数字がふられ、分類標目では丸付き数字がふられる。このとき、件名標目を除いてカタカナで表記されることとなる。

4.所在記号

 所在記号は記入の左端に記録し、同じものを対象資料の背ラベルにも添付する。資料は所在記号順に排架するため、代替物としてのカードから資料そのものにたどり着くための情報となる。書架分類記号と図書記号から構成され、補助記号や別置記号を伴うこともある。複数館の蔵書を対象とする総合目録では、資料の所蔵館を示す情報も必要である。

 次に日本十進分類法(NDC)の特徴について説明する。

 公共図書館学校図書館では100%に近い採用率で広く普及している日本の標準分類表である。また、日本図書館協会が常置の組織として委員会を設置し、その維持・管理を行っている。

 本表編(解説・第1~3次区分表・細目表)と一般補助表(凡例・形式区分・地理区分・海洋区分・言語区分・言語共通区分・文学共通区分)・相関索引編の2冊で構成されている。現在は機械可読版もある。

 はじめに本表の概要を述べる。

 分類体系として列挙型分類法を採用する。カッター考案の展開分類法を参考にしているが、第1区分の6を「産業」としており、ここに考案者の森清の独自性が表われている。第2次区分以降も「歴史」、「地理」における日本中心の項目設定、「宗教」の扱い等、日本固有の文化を重視する体系となっている。アラビア知識の全体を9区分して1から9までの数字を与え、どの区分にも属さないものや総合的・包括的な領域に0を使用して総記とし、合計10の区分肢を作る。これらを第1区分とし、それぞれの区分をさらに9区分と総記に分けて第2次区分とする。同様に10区分を繰り返し第3次区分が展開される。この第3次区分をさらに細かくした表を細目表という。この細目表がNDCの本体であり、分類作業をする際のツールとなる。単純明快で階層構造を形式的に理解しやすく、記号の展開性に富んでいる点がKの十進分類法の優れたところである。

 次に補助表について述べる。

 列挙型分類法は主題を表す分類項目をあらかじめ分類表中に列挙しておき、その中から資料の主題に対応する分類項目を選び、そこに分類することを基本とするものである。しかし、実際には全ての主題を網羅することは不可能であり、細目表で表現しつくせない場合に補助表を用いて記号を合成するという現実的な対応を行っている。

 一般補助表と固有補助表の2種類がある。

 最後に相関索引について述べる。

 本表では観点や分野によって分散してしまう主題を、これによりひとつに集中させる仕組みをもっている。索引語に丸かっこで付された限定語によって観点が示される。よく検索される合成語については、その便宜を考慮して双方から検索できるようにしている。

 

〈参考文献〉

 

※講評:ほぼポイントを押え、自分の言葉で出来るだけ表現しようと努力されている点が評価できます。改善すべき点は文中を参照してください。今後は結論部分にも力をいれてください。

・同定識別:用語の説明があればなおよい

・標目:典拠コントロールについて、触れられておられません。各種類について簡単な説明を。

・列挙型分類法:その特徴について具体的に論述をココでふれた方が良いと思います。

・十進記号法:長所だけでなく短所(問題点)にもふれてください。(阪下先生)

情報サービス論レポート

大学図書館における利用指導の内容を述べた後、文献探索法(文献調査法)の効果的な指導のあり方について考察し、論ぜよ。

 

 はじめに大学図書館における利用指導の内容について述べる。

 1998年に日本図書館協会利用教育委員会が発表した『図書館利用教育ガイドライン大学図書館版ー』にその標準的な内容が示されており、「図書館主体で行う図書館利用教育の体系化と組織化を図ったもの」(「大学図書館版」発表にあたって)としている。「目的・目標」及び「方法」を5つの領域に分けて明文化うぃたものを次に挙げる。

領域1:印象付け/領域2:サービス案内/領域3:情報探索法指導/4:情報整理法指導/領域5:情報表現法指導

これをもとに各大学図書館が「ニーズと力量に合わせて」(作成方針7.)様々な利用指導を展開している。

 具体的な内容はテキストによると次の7種類である。

オリエンテーション、②図書館ツアー、③OPAC検索・カード検索指導、④文献探索法⑤コンピュータリテラシー、⑥レポート・論文を作成するためのステップ指導、⑦視聴覚機器やコンピュータ機器を使っての編集指導

 ここで更に具体的な滋賀医科大学付属図書館における利用指導の事例(注1)を挙げる。各内容に前述したガイドラインに示された領域との関連が明示されており、深い理解が得られる資料である。

①新入生オリエンテーション〈領域1・2〉

対象:学部新入生/内容:図書館の使い方、施設利用/形式:講義

②講義「情報指導」〈領域3〉

対象:学部新入生/内容:OPAC検索方法、ポータルサービス、電子ソースの紹介等/形式:実習(パソコン1人1台)/※半年を通じて行われる講義の1コマ(教員との連携)

卒業論文のための文献探索講習会〈領域4・5〉

対象:看護科3年生/内容:データベース検索実習、文献入手方法等/形式:実習(パソコン1人1台)※特別講義(教員との連携)

 次に文献探索法(文献調査法)の効果的な指導のあり方について考察し、論じる。

 文献探索法指導は、情報リテラシー教育において不可欠なものである。情報リテラシーとは「情報の必要性を認識し、必要な情報を入手・評価し、効果的に利用する能力」(注2)であり、文献探索法の指導もまた同心円的に、その能力習得を目指して行われるべきものである。

 効果的な指導の実践に求められる要素を大学図書館の場合について3つに分けて述べる。

 ひとつは学生のニーズの把握である。学生の課題解決におけるモチベーション強化を支援するものである。文献探索法の使用により「石器時代から現代社会への変革」に匹敵する有用性を体感する経験が必要である。具体的には全ての学生がごく初期の段階で機会を逸することなく受けることで、日本の知識注入型の教育による偏りを改善し、その基礎知識の確実な蓄積が図られる。更に学生の習熟度に合わせた指導であることが望ましい。1・2年生ならば一般的文献探索法、3・4年生には卒論提出に合わせてタイミングで開催する等である。独立した科目としての価値を示し、単位を認定することも有効であるといえる。

 次に指導内容の計画的・体系的実施である。集団指導による基礎的な指導の後、個別の相談を受ける体制が整っていること、例えばフロアワークの中で学生の具体的な状況に即して助言や提案をすることで製菓がその場で実感できる。1人1台のパソコンを確保する実習形式のガイダンスは講義形式よりもはるかに達成感が得られる。また、同じ内容を少しずつ高度にしながら繰り返し指導する「らせん型」の指導も効果的である。

 最後に指導者の連携・能力を挙げる。文献探索法の専門家である図書館員と大学の教員の協力体制が整ってこそ的確な指導が展開できる。授業の1コマを単発で図書館員が行うのみではなくカリキュラムの中に文献探索法を指導内容として組み入れることで文献探索法が学生の課題解決により一層密着したものとなる。必要なレファレンスツールを整備し、双方が的確に分担して指導を行う。そのためには教員側が指導に求める意図を充分に話し合い、そのメリットを教員にアピールすることが欠かせない。また、講義においては指導者のプレゼン技術が学生の理解度を左右する。そうしたスキルアップにも努めねばならない。

 以上、焦点を定めるために大学図書館に限定して述べた。しかし、文献探索法は情報化社会に生きる全ての人が獲得すべき能力であり、公共図書館学校図書館専門図書館にもその指導の役割を担うことが求められる。

 

〈引用文献〉

(注1)『平成24年度大学図書館近畿イニシアティブ基礎研修資料(研修5:滋賀医科大学 

   付属図書館 寺升夕希

(注2)『米国図書館協会(ALA)情報リテラシー委員会最終報告書』,1989

 

〈参考文献〉

 

※講評:良いレポートの1つです。(毛利先生)

生涯学習概論レポート

生涯学習における社会教育について述べてください。

 

 生涯学習における社会教育について、両者の概念および相互関係を中心に述べる。

生涯学習

 はじめに「生涯学習」と「生涯教育」という用語の扱いを明確にする。両者はその歴史的要素や主体性の相違等から混乱を招きやすいが、このレポートでは設題に合わせて、引用部分を除き、全て「生涯学習」という表現を使用することとする。

 我が国に生涯学習の概念が導入されたのは1965年「生涯教育について」の中でラングランが提唱したことによる。この概念の登場は日本の教育の仕組みを根本的に問い直させる非常に重要な契機となった。

 その後、生涯学習について様々な考え方が登場し、年月を経て議論や改良を重ね、現在「生涯学習」という概念は人々の間にほぼ定着してきたといえる。数ある定義のうち、テキストにある「人間一人ひとりが、学習することを通して、家族・友人・地域・職場そして国家から、さらに地球全体の人間だけでなく動物や植物を含めた全ての生物、そして自然との『共生』を目指した発想である」という考え方が最も包括的かつ的確に「生涯学習」というものを表現していると思う。

②社会教育の領域

 「社会教育」とは、「社会における教育」という意味であり、「家庭教育」、「学校教育」と並べられる「教育の領域」を表したものである。その領域は非常に広範であるため、「家庭教育及び学校教育以外の領域」という定義にならざるを得ない。

 家庭教育は血縁関係者によって構成される家庭で行われる教育であり、学校教育は学校教育法によって厳密に定められた教育である。したがって、それ以外で行われる教育が全て社会教育ということになる。

生涯学習における社会教育の位置づけ

  生涯学習と社会教育の相互関係については、1971年に社教審が答申した「急激な社会構造の変化に対処する社会教育のあり方について」において、「生涯教育において社会教育が果たすべき役割は大きい」、また「生涯教育という考え方は、生涯にわたる学習の継続を意味するだけでなく、家庭教育・学校教育・社会教育の三者を有機的に統合することも要求している」と明示されている。 

 つまり、生涯学習は前記3つの領域の上位概念であり、社会教育は生涯学習の下位概念の一部分なのである。言い換えれば、「生涯学習」は生涯にわたる学習者の主体的な営みの総体であり、「社会教育」は特に成人のための学習支援事業なのである。

生涯学習と社会教育の類似点と相違点

 佐藤晴雄(1998)は類似点として「生涯にわたる全ての発達段階にある人を対象にしている」、「インフォーマルな教育を含んでいる」、「現代社会における課題解決を目的にしている」、「自発的・自主的学習を重視している」、「学習の内容と方法(形態)が多様である」ということを挙げ、相違点として「社会教育は営為だが、生涯教育は当為(概念)である」、「社会教育は教育の領域に基づく概念だが、生涯教育は時間軸に基づく概念である」、「社会教育は生涯教育の下位に位置する概念である」ということを挙げている。この指摘について山田一隆(2002)は「"実態に即した"明瞭で端的な整理である」と一定の評価をしている。説得力のある理論として紹介する。

⑤社会教育の本質

 家庭教育では、学習者としての子どもは父母の拘束の下にあり、また学校教育は在籍する学校の拘束の下にある。一方、社会教育は他から命令・強制された行うものではなく、純粋に自分の意思・意欲のみによって行うものである。つまり、これが社会教育の本質である「非拘束性」なのである。

 また、ひとりの人間の一生を考えた場合、家庭や学校に所属している期間は、乳幼児期から青年期の一時期である。その時期を除く期間全てを社会教育が請け負う、すなわち上位概念である生涯学習の大部分を社会教育が担っていると考えられる。ここに生涯学習と社会教育の強い関係性を認めることができる。

 社会教育は、人々の自己学習、相互学習の活動を教育的に高めようと、意図的に行われるものであり、その目的は人々の生涯にわたる生活課題の解決を援助して、その過程で人間的な成長を促すことである。

 特に人々に親しみやすい施設である図書館には、教育基本法第12条で規定された「国および地方公共団体は、図書館、博物館、公民館、そのたの社会教育施設の設置、学校の施設の利用、学習の機会および情報の提供その他の適当な方法によって、社会教育の振興に努めなければならない」を積極的に実践し、社会教育に貢献することが期待される。

 

〈引用文献〉

・佐藤晴雄『生涯学習と社会教育のゆくえ』成文堂,1998,165p

山田一隆「社会教育」「生涯学習」の概念整理と「まちづくり」への社会教育的接

   近 ~「生涯学習政策」下の社会教育の現代的理念の検討に向けて~『政策科

   学』立命館大学政策科学会,10-1,2002,pp.143-160

   (http://ww.ps.ritsumei.ac.jp/assoc/policy_science/101/101_12_yamada.pdf)

 

〈参考文献〉

 

※講評:よく考えたレポートです。(坂井先生) 

図書館概論レポート

公共図書館を1つ選んで、施設(規模、単独館か複合館)、立地、蔵書数、貸出数、図書館職員数、実際の図書館サービスについて調査やインタビューを行いなさい。公共図書館は、中央館、分館、地域館、分室または公民館図書室を1つ選びなさい。必ず図書館名と所在地を記入すること。この調査を通じて、対象とした図書館に期待することおよび感想を述べなさい。

 

(レポート紛失のため、再現不可能でした)

図書館サービス概論02

閲覧サービスについて、他のサービスとの関連とともに説明してください。

 

 閲覧とは、館内での読書や調べもの、さらに視聴覚資料の鑑賞やインターネット利用等を含むものであり、閲覧サービスとは利用者がそれらの資料や情報に確実にアクセスすることを保障する、もっとも基本的な図書館サービスである。

 閲覧の結果、貸出サービスを受けて館外で好きな時間に通読する、複写サービスを受けて資料の一部を複写・私有して活用する、レファレンスサービスを受けて生じた疑問を解決する、読書案内で関連資料の紹介を受ける等のサービスにつながり、ほかにも予約やリクエスト・相互貸借や文献複写サービス等、図書館におけるさまざまなサービスに展開する可能性をもつものである。

 利用者が求める資料・情報に確実にアクセスするためには、システムや環境の整備が不可欠である。

 具体的には次のようなことが挙げられる。

 まずは蔵書の量と開架・閉架スペースとのバランスを図ることである。可能な限り開架とし、利用者が自由に本を手に取れることが望ましい。

 次に利用案内・フロアマップ・排架案内図等の配布物の工夫、開架コーナーではわかりやすいサイン類の表示が求められる。

 また、常に書架の整理整頓を心がけたい。

 さらにフロアワークによる利用者への援助・閲覧環境の問題点の発見および改善等も挙げられる。

図書館サービス概論04

複写サービスについて、他のサービスとの関連とともに説明してください。

 

 複写サービスとは、資料提供サービスの一環として、利用者の求めに応じて図書館が所蔵する資料の一部を複製し、その複製物を提供するサービスである。

 複写サービスの意義として、次のようなものが挙げられる。

・参考図書等貸出禁止の資料について、必要な部分の複写物を提供することで貸出と同様のサービスが可能となる。

・利用者は複製物を私有できるため、時間・空間的制約から解放されて資料を活用できる。

・文献複写サービスでは、所蔵のない資料が入手(提供)可能となり、閲覧・貸出サービスを増強するサービスといえる。

・筆写に費やされる利用者の時間と労力を節約できる。

・貴重書等の現物の劣化を防止することができる。

・切り取り等の汚損を防止することができる。

 複写サービスの運営においては、次の点に留意する必要がある。

 図書館サービスは基本的に無料であるが、複製物の場合は、共用の資料を利用者が私有化することになるため、料金(コピー代等の実費)が徴収される。

 また、利用者に複写の目的や複写可能範囲等、著作権に関する注意を喚起しながら、法律の範囲内で実施しなければならない。

図書館サービス概論06

レファレンスサービスについて、他のサービスとの関連とともに説明してください。

 

 図書館サービスには、資料提供サービスと情報(提供)サービスがある。前者には、閲覧・貸出サービス等があり、レファレンスサービスは後者に位置づけられる。

 レファレンスサービスとは、図書館の資料を使って、資料や情報を探す利用者の手助けをするサービスであり、質問の解決に役立つ資料の紹介のほか、簡単に答えられる事柄については情報提供も行う場合もある。

 典拠のある確実な情報を提供するところにインターネットの検索エンジンでは得られない意義があるといえる。

 レファレンスサービスは、直接的サービスと間接的サービスからなる。

 直接的サービスは、図書館員が利用者と直接向き合って情報の入手を支援するものである。また、レファレンスコーナーのみならず、フロアワークの途中でも積極的に行うことができ、電話やメールでの問い合わせにも対応する。

 提供された情報をもとにして、利用者はさらに閲覧・貸出サービスの提供を受ける可能性をもち、自館に該当資料の所蔵がない場合は、相互貸借や文献複写サービスに展開していく。

 間接的サービスは、情報の入手が容易にかつ効果的になるようにあらかじめ図書館のコレクション・利用環境を整備しておく活動である。具体的には、参考図書類の整備・商用データベースの契約および提供・インターネット使用可能な端末の設置等である。

 また、レファレンスサービスは読書案内と関連が深い。読書案内では資料全体を一つの単位として捉えるが、利用者はあまり両者の区別を意識しないため臨機応変な対応が求められる。

 さらにレファレンスサービスを発展させたものとして、レフェラルサービスやカレントアウェアネスサービスがある。前者は自館での回答に限界がある場合に専門機関(家)に照会(あるいは紹介)するものであり、後者は図書館が利用者に最新情報をメール等で定期的に提供する能動的なサービスである。

図書館サービス概論08

課題解決支援サービスについて、他のサービスとの関連とともに説明してください。

 

 課題解決支援サービスとは、図書館が地域住民の生活や仕事に役立つ情報を積極的に提供することによって、サービスの幅を広げ、より一層地域住民に必要とされる図書館をめざすものである。

 情報サービスの中に含まれ、レファレンスサービスを核として、さらに発展させたものであり、これまで図書館で提供されてきた閲覧・貸出・読書案内等と密接に連携して実施される。比較的新しいサービスであるため、利用者の認知度を含めて発展途上にあるサービスといえる。

 想定される課題としては、行政支援、学校教育支援、ビジネス支援、子育て支援のほか、医療・健康情報や法律情報の提供等が挙げられる。

 具体的には次のようなものがある。

 行政支援には、政策形成に役立つ資料や情報の提供・IT機器等の研修会・自治体内資料の組織化等がある。

 学校教育支援には、資料の団体貸出・職場体験学習の受け入れ・総合的な学習における連携等がある。

 ビジネス支援としては、経営や起業セミナー、就職支援等とともに特に専門機関を紹介するレフェラルサービスが重要である。

 子育て支援には、分類では分散してしまう資料を集めた子育て支援コーナーの設置・子育てボランティア団体の紹介等、特に人的な援助が求められる分野である。

 これらに取り組む際には、第一に、地域の人々の抱える課題の的確な把握、第二に、行政部局や地域団体との連携協力体制の強化が不可欠である。

図書館サービス概論10

ヤングアダルトサービスについて、他のサービスとの関連とともに説明してください。

 

 ヤングアダルトサービスとは、対象別サービスのひとつであり、児童と成人の中間にあたる概ね12歳から18歳くらいの思春期にある青少年を対象とする。

 ヤングアダルト(=YA)とは非常に独特の時期であり、その特徴として次のようなものが挙げられる。

・子ども扱いされたくないという気持ちや自意識が強くなる。

・一方で、社会との関わりにとまどいをおぼえ、また主体的に図書館サービスを受けるには未熟である。

・流行の影響を受けやすく、興味・関心が移り変わりやすい。

・勉強や部活が忙しくなり、図書館の利用率が下がる。

 したがって、その年頃に特有の資料やサービスを提供することによって、心身ともに不安定なYA層を着実に受け止め、児童サービスから成人サービスへの移行をスムーズにする橋渡し役としての機能が求められる。

 YAに向けた資料としては、学校生活や進学・就職、流行や趣味、恋愛等に関する内容が主なものとして挙げられ、ライトノベルやAV資料、時にはマンガ等が求められることもある。教育的観点から問題視されることもあるため、明確な選書方針に基づきながらYAの「今」を大切にしたきめ細かい選書を行う必要がある。

 また、YAサービスでは彼らのための「居場所」の設置が重要な要素となる。彼らにとって図書館が居心地の良い場所となれば、自主性を尊重した参加型コミュニケーション等の様々な活動の展開が期待できる。

図書館サービス概論12

(※この問題が出題され、合格できました。)

障害者サービスとは何か、その意義とともに説明してください。

 

(1)障害者サービスの意義

 障害者とは、視覚・聴覚障害等の身体障害者のみならず、知的障害者やその他「何らかの理由で図書館サービスを利用するのが困難な人々」と定義できる。

 公共図書館の使命は、このような人々も含めたすべての地域住民の知る権利・学ぶ権利を保障することであり、彼らの利用を阻む障壁を可能な限り取り除くための努力・配慮こそが図書館における障害者サービスの意義である。

 

(2)障害者サービスのための資料

 (1)で挙げた意義を実践するための資料には様々なものがあり、次のように整理できる。

視覚障害者のための資料

 点字資料・録音資料・拡大資料

聴覚障害者のための資料

 字幕付き動画・手話付き動画

③障害児のための資料

 布の絵本(布製でボタンやヒモ、マジックテープがついており遊びながら手指の訓練ができる)・さわる絵本(多様な素材から構成され触り心地を楽しむ)

DAISY図書(=Digital Accessible Information System:アクセシブルな情報システム)

 データの加工やランダムアクセスが可能である等の長所をもつ。もので、音声DAISY・テキストDAISY・マルチメディアDAISY等がある。

⑤障害者のためのネットワーク情報資源

 「サピエ」(=視覚障害者情報総合ネットワーク)では、デジタル化された点字データや音声図書が利用できる。

 

(3)障害者サービスの内容

 はじめに利用環境の整備を挙げる。誘導用ブロックや手すり、スロープ等の設置や車椅子に配慮して書架の間の通路の幅を広くする等が求められる。

 カウンターワーク・フロアワークでは、障害者特有の問題を的確に察知し、手話や筆談等によるコミュニケーションを図ることが求められる。また、こうした支援を積極的に行う姿勢(耳マーク等)を明確に示しておくのがよい。

 また、対面朗読(利用者の希望する資料等を朗読するもの)、点訳も重要なサービスであり、ボランティアや福祉施設との連携を整備する必要がある。

 さらに来館が困難な人々のための館外におけるサービスとして宅配・郵送貸出・施設訪問等細やかな対応が求められる。

図書館サービス概論14

図書館における相互利用について、その意義とともに説明してください。

 

 相互利用とは、図書館間の連携・協力体制のひとつであり、利用者の求める資料・情報を自館が所蔵していない場合に他館から調達して提供するサービスである。限られた情報資源の有効利用が促進され、図書館サービスの充実を図ることができるという大きな意義をもつ。さらに資料・情報に関する地域間格差の是正にも効果的である。

 相互利用には、①現物貸借、②文献複写があり、さらに利用者に他館を紹介することを含む場合もある。

①現物貸借

 対象は所蔵する図書のうち、貸出可能なものに限る。長所は書店で購入するより短い日数で利用者に提供できる点、購入費が節約できる点である。

 現物貸借の普及には、所蔵情報(横断検索)および配送制度の整備が不可欠である。

 私の住むXX市の場合、XX県立図書館の横断検索システムがあり、XX県内の市町村立図書館の所蔵する本であればXX市中央図書館に取寄せて閲覧・貸出サービスを受けることが可能である。

②文献複写

 対象は、新聞・雑誌等の記事・論文である。長所は、現物が残るため他の利用者の利用を妨げない点、返却不要であるため片道の送料で済む点、利用者は複製物を私有できるためいつでもその資料を活用できる点である。ただし、著作権への配慮が必要である。

 

図書館サービス概論16

図書館サービスにおいて著作権をどのように考慮すべきかについて説明してください。

 

(1)著作権制度の意義

 著作権とは、著作者が自己の著作物を排他的に支配する財産的な権利である。

著作権法は、著作者の利益を守るためのものであるが、一方、文化の発展に寄与するため、著作者と利用者の利益のバランスを調整することをもうひとつの目的としている。

 図書館が扱う資料・情報には著作権法の保護の対象となるものが多く含まれているが、図書館が非営利で運営され、無料でサービスを提供する公益性の高い機関であるため、図書館サービスを円滑に実施するにあたっては著作権の一部が制限されている。

 ただし、図書館が著作権を無視すれば、出版物が売れなくなり出版・販売業界を圧迫、長期的には図書館が収集する資料の多様性も損なわれかねないことに留意する必要がある。

 

(2)図書館サービスと著作権

 つぎに図書館における主要なサービスと著作権について説明する。

①閲覧・貸出サービス

 著作者の許諾は必要ない。映画等については著作権処理済のものを提供している。

②複写サービス

 次のような場合等に、著作者の権利を制限する規定を設けている。

ア)利用者の求めに応じて、調査研究のために一部分(半分まで)を提供する場合(雑誌は最新号以外全部可)

イ)図書館資料の保存のために必要な場合

ウ)他の図書館等の求めに応じて入手困難な資料の複製物を提供する場合

 利用者に対しては、複写の目的や可能範囲についての注意を喚起することが重要である。

③映画上映会やCDコンサート

 営利を目的としない場合、著作者の許諾は必要ないが、「ビデオ頒布後3年以上経た作品を上映対象にする」等、日本図書館協会は自主的な規範を設けている。

④障害者サービス

 通常の資料・情報を加工して提供するにあたっては、障害者の権利を保障するために著作権法第37条において様々な規定が制定されている。健常者との情報格差是正を目指して今後も法改正が注目される分野である。

図書館サービス概論18

図書館における利用教育について、その意義とともに説明してください。

 

(1)利用教育の意義

 図書館における利用教育とは、利用者が図書館サービスの利用方法を知ることや情報探索能力を身につけるようにすることである。

 その意義は、次のように整理できる。

  • 利用者がより効率的・効果的に図書館サービスを利用するようになること

 (利用者としての能力が向上することで利用者・図書館(員)双方の時間・労力が節約され、それらを有意義に活用できる。)

  • 図書館が社会教育機関として生涯学習支援機能を果たすこと

 (図書館は生涯にわたるたゆまない知識や能力の習得の拠点として大いに貢献できる施設である。)

(2)利用教育の内容

 利用教育の内容は①印象づけ、②サービス案内、③情報活用能力育成

に分けられる。

①印象づけ

 利用案内パンフレットやチラシによって図書館の機能(各自の情報ニーズの保障・生涯学習の支援)が認識・理解され、必要な時にはぜひ図書館を利用しようという意識を持たせるよう努めることである。

②サービス案内

 具体的に何をしているか、つまり施設・設備・サービスおよび職員による支援の存在を紹介し、図書館を利用しやすくするものである。

③情報活用能力育成

 情報ニーズの認識・情報の探索のみならず、情報の評価・利用・表現という一連のサイクルを自主的におこなう能力を獲得するための指導である。

(3)利用教育の方法

 利用教育の方法には、間接的なものと直接的なものがある。

 前述の利用案内パンフレットやチラシ、また、パスファインダー・図書館のウェブサイトの情報等も間接的な利用教育にあたる。

 直接的な利用教育(図書館員による対面指導)には、図書館ツアーや情報探索講習等、またレファレンスサービスやフロアワーク中の具体的状況での助言等も有効である。

 教育効果を考えながら臨機応変に実施することがで利用者にとって望ましいものとなり、さらにそれが新たな図書館利用に繋がっていく。

図書館サービス概論20

 図書館の環境整備について、その意義とともに説明してください。

 

 図書館における環境整備は、利用者にとっては、快適な利用、また図書館にとっても効率的な図書館サービスの運営に欠かせないものである。

 つまり、利用者およびサービス対象者全体への準備的なサービスであるとともに、それ自体が閲覧サービスとしても重要な意義をもつ。

 以下に環境整備において配慮すべき具体的な事項について説明する。

①図書館サービスへのアクセス

 まずは目立つ場所に建てられていることや交通手段が整備されていること、分館(駅前のサービスコーナー・返却ポスト等を含む)の設置、さらに開館時間については夜間開館日・複数館で異なった休館日を設定する等が望まれる。

また非来館者のアクセス手段としてウェブサービスの充実がある。

②図書館内の構成

 利用者別コーナーの独立・混雑時への配慮・入口付近に受付を設置する等といった空間の区分と配置を工夫すること、図書館員の配置については必要時の速やかな支援・積極的なフロアワーク等が望まれる。

 収納効率や頻度を考慮して書架の配置方法を決定する、その他、雑音への配慮、空調、および照明(見やすさと落ち着きのバランス)への配慮が望まれる。

③図書館家具

 新聞専用の台や児童書の平置き棚等資料の形態に合わせた家具を配置し、またそれらのメンテナンス面への配慮も必要である。

④サイン計画

 サービスや各コーナー、資料へ迅速かつ的確に導く工夫は、利用者および図書館(員)双方の時間の節約と混雑の緩和(動線がスムーズになるため)につながる。

 このように、諸状況を想定し、また状況に合わせて変化させ工夫することで図書館サービスはより一層使いやすいものとなり、利用の増加に結びつく。

児童サービス論02

子どもの読書の意義を(できれば体験を交えて)述べてください。

 

 「子どもの読書」とは、一般的な読書、つまり「書かれた文字を自分の目で追っていく」という行為に加えて、誰かに読んでもらい内容を理解する「耳からの読書」をも含むものである。文字の習得がまだ不充分である子どもには「耳からの読書」が次の一人読み読書の基盤作りとなるからである。

 子どもは、耳からの読書、一人読み読書のいずれの場合においても、言葉を手掛かりにしてイメージを浮かべ、たくましい想像力で本の世界に入り込む。その世界を体験したかのように主人公や登場人物になって考え行動し、喜怒哀楽を味わう。

 これが感動となって子どもの心を揺さぶるのであり、この感情の起伏の振幅が大きければ大きいほど強く心に残る。子どもの場合、特にそれが激しい喜びを伴うことになり、その喜びを再度体験したいという欲求が生じ、読書体験を蓄積していく。

 また、継続して読むうちに言葉も蓄積され、それによってだんだん読むことが容易になってゆき、さらに言葉を習得していくということにも繋がる。

 本の中での様々な体験は感性と知性の両方から子どもの精神を鍛えるものとなる。愉快痛快のみならず、苦しみや我慢を知ることで人間らしい感性を身に付け、一方で考える力(思考力)、比べる力(比較力)、わかる力(認識力)、決める力(判断力)等、知性の働きと合わさって、その子なりの価値観が形成される。

 こうして人間的な成長をもたらし、やがて知らず知らずのうちに人格の形成に導く。ここに子どもの読書の意義がある。

 私の子ども時代の読書体験で印象に残っているのは、絵本「ペレのあたらしいふく」(ベスコフ,1976,福音館書店)である。主人公のペレは、素敵な一着を手に入れるために身近な人々と交渉を重ねてゆく。一見、非力な小さな子どもだが、自らの力で自分の欲しいものを手に入れてゆくペレに自分を重ね合わせ、ワクワクしたことを今でもはっきりと覚えている。大人になって振り返れば、その読書体験が私に「自尊心や誇り」とは何かを教えたのだと実感できる。それが現在の私のもつ価値観の一端を担っていることは間違いない。